「育ちに大切なことってなんでしょう?」

 私が勤務する保育園の、ある年の園だよりから抜粋した文章です。

 慈しみをもって育てるという行為の根源は、人へも動物へも同じであると思います。年齢の差異によって理解の違いはありますが、おたまじゃくしへの出会いによって育てる目線を持った子ども達の様子をご紹介します。


6月号【おタマちゃんやってくる】

 先日まで五月人形が飾ってあった場所に、「おたまじゃくし」のケースが置いてあるのをごぞんじですか。このおたまじゃくしは、姉妹園のN保育園からのいただきものです。「2年物のオタマジャクシですよ」と言われて6匹いただきました。「2年物?」「きれいな水のところにいたから、いつもきれいにしてね」「どうやって?」。どうやらその園もそう言っていただいたらしいのです。その方の家では、水が浄化できるように循環の装置を付けて泳がせているとのこと。「えぇ?金魚みたいにおたまじゃくしを循環装置に?」疑問に思いながらもまずはそのようにしてみました。

 子ども達はこの時期ならではの小動物の出現に大喜びです。その反響といったら次の通り。

@ケースを覗き込む(これは普通)

Aケースの横を手のひらでパンパン叩く(ちょっと過激)

Bケースを持ちあげ、左右に揺する(随分過激)

C水の中に指を入れ、おタマちゃんを追跡(おタマちゃん恐怖)

C「かわいいね〜」と指でケースをなでなで(おタマちゃん安穏)

等々の子ども達の色々な姿が見られました。

 しかし、循環する水流の中で、必死に水の抵抗に耐えています。停止することもできず、ただひたすら泳ぎ続けているおたまじゃくしを見て、本来の足が出て、しっぽが消えて・・・という成長が止まってしまい2年物になっていたの?早く生息地に近い環境を作ってあげないと。

 さてさて、これから大変身を遂げるであろう面々の、華麗なるショーshineを子ども達と一緒に見守っていきたいと思います。


7月号【気になる、おタマちゃん】

 5月末からやってきたおタマちゃん。このままではいけないと、子ども達と協力して、水槽の中にビオトープをつくりました。まずは石ころを拾ってきて礎石にして、その上にネットを置き。そこへは苔を敷き詰めました。ネットすれすれのところまで水を入れて、ところどころに草をあしらい居心地の良くなる空間の完成。にわかビオトープに身を隠し始めたおタマちゃん、もう子どもたちは気になって気になって・・・。観察マナー(ストレスから解放)もすっかり身に付いたおかげか、エサのグレード(パン粉→市販のメダカのエサ)が上がったせいか、最近のおタマちゃん達はすっかりからだが大きくなってきました。何匹かの後ろ足は随分立派になり「おやおや?前足が・・・」「うーん、まだしっぽがあるねぇ」と言ってる間に「飛び出したらどうする?」「何色のカエルになるの?」と。いえいえ、だれの(どの種のカエル)子どもかわかりません。

 今おタマちゃんは、園全体に色々な想像力を与えてくれています。もうしばらく皆で見守って、変身の時を迎える頃には年長組さんにお願いして、山のせせらぎに帰してあげることが一番いいのかな・・・と考えています。confident

 

 


9月号【おタマちゃん記録最終版】

 残暑が厳しい今年の夏、雷thunder・ゲリラ豪雨rainとこの自然事象は、子ども達にとって身も心もドキドキと不安なことだったと思います。6匹のおタマちゃんがカエルに成長し帰って行った山も、落雷や豪雨にみまわれ「元気にしているかな?」と心配する子ども達のすがたがみられました。

 8月の初めに、先の4匹が山へ巣立ってから、遅れて5匹目がカエルに成長しました。残すところあと1匹。やせっぽちでみんなより少しからだが小さく、だけど鳩胸で、丘に小さな前足をかける雄姿は一人前。 しかしまだまだ長い尾は消えず。待ちに待つこと2週間。いよいよ巣立ちの時がやってきました。

 時は8月15日、幼児組の出席児が代表して、二匹をたずさえ山へ出かけました。そして、カエルたちが無理なく離れられる川の浅瀬を選びました。まずは先に成長した1匹を離しました。長らく小さな水槽で我慢して過ごしていたせいか、すぐに「やっとでられたわぁ」のごとく、さっさと離れて川の奥へと進んでいきました。最後に子ども達が「おおきくなーれnote」「おおきくなーれnoteと励まし続けた、あの成長の遅かった子を離しました。すぐにぴょんぴょんと離れていったのですが、振り返りまた戻ってきました。子ども達は「あ〜、かえってきたsign01」「もってかえる〜」と、思い思いのことを口にしていました。すこし間を置いて、また振り返って川の奥へと進んでいきました。きっと、いつも心配して見守ってもらっていたことへのお礼を言いたかったのでしょう。最後の最後の動きは、そのように見えた心に深く残る行動でした。


 この三ヶ月の間、小動物との出会いとほのぼのとした関わりを通して、生きものの成長は物的環境、人的環境というハードのつながりとハートのつながりが大きく成長を促していくということを、子ども達とともに学んだひと夏でしたhappy01

Author:奈良県保育協議会 米田 恵美子

奈良県保育協議会副会長。奈良県こども・子育て応援県民会議委員。
宝山寺福祉事業団 いこま保育園園長。生駒市において、トリプルP(前向き子育てプログラム)ファシリテーターとして子育て家庭への支援にかかわっています。

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